法制審共同親権案
民法
どう変わる

パブコメ試案の解説
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※法制審議会家族法制部会資料18-1に基づく家族法制の見直しに関する中間試案のたたき台(修正版)のこと。

中間試案の目次

前注1

本試案では「親権」等の用語については現行民法の表現を用いているが、これらの用語に代わるより適切な表現があれば、その用語の見直しも含めて検討すべきであるとの考え方がある

解説

中間まとめ全体についての「注」です。
親権という言葉も変えたほうがいいのではないかという議論をしています、ということです。
「親権の行使」という言葉も変えるべきではないでしょうか?
子どもの権利を守る立場で言葉は選びたいものです。

パブコメへの提案

前注2

本試案で取り扱われている各事項について、今後、具体的な規律を立案するに当たっては、配偶者からの暴力や父母による虐待がある事案に適切に対応することができるようなものとする。

解説

DV・虐待については全体として「適切に対応することができるようなものとする。」という姿勢を示しているように読めます。
考えられる疑問や課題は以下のとおり。
・暴力を定義していない中で、身体以外の暴力(モラハラ、経済的・性的DVなど)に対応できる制度になるのか?
・「適切に対応する」ための、DVや児童心理の専門家を含む、家裁の体制が不足しているのでは?
過去にはDVがあったが(別居した等)今はないので、連絡を取っても大丈夫でしょう」と、審判等で言われることがありますが、全く実態にあっていません。
DV加害は別居しても離婚しても続きますから、「過去の暴力」などと決めつけないで、過去の暴力の有無にかかわらず、今後も、将来にわたって、被害者が安心できる制度とすることが重要です。

パブコメへの提案

第1-1 子の最善の利益の確保等

(2) 父母は、民法その他の法令により子について権利の行使及び義務の履行をする場合や、現に子を監護する場合には、子の最善の利益を考慮しなければならないものとする(注1)。
(3) 上記(2)の場合において、父母は、子の年齢及び発達の程度に応じて、子が示した意見を考慮するよう努めるものとする考え方について、引き続き検討するものとする(注2)。

解説

両親は、子どもについての権利行使や義務の履行をするときは、子の最善の利益を確保すべき、ということを書いています。細かい点はともかく、この点は別の意見はあまりない部分かと思われます。

パブコメへの提案

第1-2 未成年の子に対する父母の扶養義務

(1) 未成年の子に対する父母の扶養義務の程度が、他の直系親族間の扶養義務の程度(生活扶助義務)よりも重いもの(生活保持義務)であることを明らかにする趣旨の規律を設けるものとする。

解説

両親は、未成年の子どもに対して「扶養の義務がある」、ということを書いています。その通りです。未成年の子に対する親の扶養義務は、「一杯のかけそば」であっても分け与えなければならないという高度な義務であることを明らかにするという意味ではこの規律には賛成したい。しかし、以下のとおり、未成年と成年で区切ることは反対。

⑵成年に達した子に対する父母の扶養義務の程度について、下記のいずれかの考え方に基づく規律を設けることについて、引き続き検討するものとする。

【甲案】子が成年に達した後も引き続き教育を受けるなどの理由で就労をすることができないなどの一定の場合には、父母は、子が成年に達した後も相当な期間は、引き続き同人に対して上記(1)(※未成年の子ども)と同様の程度の義務を負うものとする

【乙案】成年に達した子に対する父母の扶養義務は、他の直系親族間の扶養義務と同程度とする

解説

成人した子どもに対して、どんな扶養義務とすべきか甲乙の2つの案から選べ、ということです。
18になったら、大学生になったら「もう親は面倒を見ない」とするということ、つまり「離婚後の養育費は18歳までしか支払わないでいい」とするかどうか、です。
現在の家庭裁判所で取り決められる養育費に関しては20歳までという例が圧倒的です。
また、現在の調査では、子どもたちの83%が18歳以上で大学や専門学校などの高等教育を受けています。

パブコメへの提案

参考: 共同親権の考え方マップ

以降の項目では、さまざまな親権のあり方が提示されており分かりづらいので、全体像を整理したマップを作成しました。

以下では、それぞれの案についての詳細を解説し、ご自身のパブコメの参考となる提案をします。

第2-1 離婚の場合において父母双方を親権者とすることの可否

【甲案】
父母が離婚をするときはその一方を親権者と定めなければならないことを定める現行民法第819条を見直し、離婚後の父母双方を親権者と定めることができるような規律を設けるものとする。

【乙案】
現行民法第819条の規律を維持し、父母の離婚の際には、父母の一方のみを親権者と定めなければならないものとする。

解説

共同親権を選べるようにすることとするかどうか、という質問です。
乙案が現行制度。選ぶとすれば乙しかありません。
なぜなら、程度の差はあれ、「紛争がある当事者、不仲な当事者」について離婚後も関わりを義務とすることは、更なる紛争を惹起する要因になるからです。
信頼関係を維持できている当事者は、規律がなくてもできていますから、あえて新しい制度の必要性を求める立法事実がありません。

パブコメへの提案

第2-2  親権者の選択の要件

上記1【甲案】において、父母の一方又は双方を親権者と定めるための要件として、次のいずれかの考え方に沿った規律を設けるものとする考え方について、引き続き検討するものとする。

【甲①案】父母の離婚の場合においては、父母の双方を親権者とすることを原則とし、一定の要件を満たす場合に限り、父母間の協議又は家庭裁判所の審判により、父母の一方のみを親権者とすることができるものとする考え方

【甲②案】父母の離婚の場合においては、父母の一方のみを親権者と定めることを原則とし、一定の要件を満たす場合に限り、父母間の協議又は家庭裁判所の審判により、父母の双方を親権者とすることができるものとする考え方

解説

親権に関して、「共同親権」をデフォルトとするか、「単独親権」をデフォルトとするか、という質問です。甲②が現状に近いということはできるので、どうしても選ぶなら②押しではありますが。
他の国のように、共同親権を選択する場合には、家裁の関与、または、熟慮期間をもうけるなど、第3の道はないのでしょうか?

パブコメへの提案

 (共同親権が選択できる社会となったと仮定してお考えください)
第2 - 3 (1) 監護者の定めの要否

【A案】離婚後に父母双方を親権者と定めるに当たっては、必ず監護者の定めをしなければならないものとする。

【B案】離婚後に父母双方を親権者と定めるに当たっては、監護者の定めをすることも、監護者の定めをしないこともできるものとする。

解説

共同親権になったら、監護者を定めるべきです。A案推し。
共同親権を推進する人たちは、監護者の指定を拒みたいようです。しかし、それでは日常的の子の監護に関することはだれがどう決めていくのでしょうか。おそらく、交代監護(両親の間を子が行き来する)を想定しているのでしょう。不仲で別居・離婚した二人の間を子ら行き来することが、子どもにとってどういう影響があるのでしょうか。ご意見を伺いたいです。

 (共同親権が選択できる社会となったと仮定してお考えください)
第2 - 3 (2) 監護者が指定されている場合の親権行使

ア  離婚後の父母の双方を親権者と定め、その一方を監護者と定めたときは、当該監護者が、基本的に、子の監護に関する事項(民法第820条から第823条までに規定する事項を含み、同法第824条に規定する財産管理に関する事項や法定代理権及び同意権を含まない。)についての権利義務を有するものとする考え方について、そのような考え方を明確化するための規律を設けるかどうかも含め、引き続き検討するものとする(注2)。

解説

ここに書かれていることを言い換えると:
今回の提案では、共同親権が導入された後、監護者に指定されたら現行の民法で「親権者」の役割とされている 第820条(監護教育)、第821(居所指定)、第822(懲戒権)、第823(職業許可)は一人で決めていいけれど、第824条:財産管理、法定代理権及び同意権は一人では決められない。
そこは「共同親権」ということです。

財産管理のイメージ:子どもにお爺さんやお婆さんからもらった教育資金などがあったら、その管理をする。 

法定代理権や同意権のイメージ:こども名義の契約締結とか子どもが勝手に行った経緯約に対する同意など

現状の単独親権ではこんな感じに区分けされていて、共同親権の時に、監護者と親権者の役割分担をこの形で行くのかどうか検討しますと書かれています。

イ 離婚後の父母の双方を親権者と定め、父母の一方を監護者と定めたときの親権(上記アにより監護者の権利義務に属する事項を除く。)の行使の在り方について、次のいずれかの規律を設けるものとする。

解説

共同親権の「行使のあり方」、つまり、監護者とならなかった共同親権者が監護者にどう関わるのかを3つの案から選べ、という提案です。「共同親権はダメ!」という意見の方も、共同親権になったらこんなことになる、大変だというイメージをもって、提案内容はよく見て「なぜダメか」も含め意見を出していきましょう。

【α案】
監護者は、単独で親権を行うことができ、その内容を事後に他方の親に通知しなければならない。

【α案】解説

共同親権が導入されて、監護者になった人は(今の同居しているひとり親と同じ状況)、子の財産管理、法定代理権及び同意権についても自分だけで決めて行うことができる。でも、後で、共同親権を持っている別居している親に通知はしなくてはいけないという案です。
現状と違うのは「後で通知すること」だと考えればいいかと思います。
β案、γ案に比べると負担が軽いですが、それでも義務として通知するという形で関わりを強制されることはどうでしょう。予想される嫌がらせなどがあればコメントをよせてください。

【β案】
① 親権は、父母間の(事前の)協議に基づいて行う。ただし、この協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、監護者が単独で親権を行うことができる。
② 上記の規律に反する法定代理権及び同意権の効力は、現行民法第825条と同様の規律による。

【β案】解説

①共同親権β案が導入されたら、財産管理、法定代理権及び同意権を行うときは、二人の共同親権者で話し合わなくてはいけない。でも、話し合いが決裂したり元々話し合いができないときは監護者になった人が一人で決めていいです、と書いてあります。
現状と違うのは話し合わなければいけないということです。
▼イメージ事例▼
子どもが交通事故に遭い、緊急手術が必要なので同意書にサインしなければならない。急いで別居している親に電話したが出ないため自分でサインした。
②の825条とは
例えば、本来共同で行わなければならない財産管理行為を監護者が事前協議を一切せずに無断で行った場合でも、取引の相手方が(事前協議なく取引したことを)「知っていた場合」にのみ無効となるとする現行法の規定です。
▼イメージ事例▼
子どもの学費にと祖母から贈られた貯金を、共同親権者で話し合うことなく、父親が遊興費にに使った場合でも、相手方が知らなければ、無効にはならない。
825条のおかげで、現行の共同親権(婚姻中)でも、一方の親だけの同意で、問題なく社会が動いてきた。法務省は、825条があるので、離婚後の共同親権でも取引に支障はないですよ、実害ないですよと言いたいのだと思います。この場合は損害賠償請求になるということですね。
悪意がなければ、一人で決めても後から訴訟などをすることはできない、ということです。
▼イメージ事例▼
子どもの学費にと祖母から贈られた貯金を、共同親権者で話し合うことなく、父親がギャンブルの負債の支払いに使った 
この場合は損害賠償請求になるということですね。悪意がなければ一人で決めても後から訴訟などをすることはできない、ということです。

ただし、注3には「本文の【β案】を採用した場合において、監護者と定められた親権者の一方が子の最善の利益に反する行為をすることを他方の親権者が差し止めるための特別の制度を新たに設けるべきであるとの考え方がある。」と書かれていて、悪意がなくても差し止め訴訟ができる可能性もあり、油断はできません。

【γ案】
① 親権は父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは他の一方が行うものとする。
② 親権の行使に関する重要な事項について、父母間に協議が調わないとき又は協議をすることができないとき(父母の一方が親権を行うことができないときを除く。)は、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、当該事項について親権を行う者を定める

【γ案】解説

共同親権が導入されたら、財産管理、法定代理権及び同意権を行うときは、二人が合意しなくてはいけない
話し合いが決裂したり元々話し合いができないときは家庭裁判所に申し出て決めてもらう、と書いてあります。これはハードルが高い提案ですね。
▼イメージ事例▼
同居中から蓄えていた子ども名義の預金を子の進学のために使おうとしたけど、そもそも進学のことなどに意見が合わない両親だったので、話し合いでまとまることは絶望的...。

パブコメへの提案

(共同親権が選択できる社会となったと仮定してお考えください)
第2 - 3 (3)監護者の定めがない場合の親権行使(注5)

ア (上記(1)【B案】を採用した場合において)監護者の定めがされていないときは、親権は父母が共同して行うことを原則とするものとする。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは他の一方が行うものとする。

イ 親権の行使に関する重要な事項について、父母間に協議が調わないとき又は協議をすることができないとき(父母の一方が親権を行うことができないときを除く。)は、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、当該事項について親権を行う者を定める。

ウ 上記の各規律に反する法定代理権及び同意権の効力は、現行民法第825条と同様の規律による。

解説

ここで書かれていることは、先の【γ案】の内容とほぼ同じです
監護者は指定されていないけれども、親権の行使に関しては合意が必要、合意できなければ家庭裁判所です。

(共同親権が選択できる社会となったと仮定してお考えください)
第2 - 3(4) 子の居所指定に関する親権者の関与

(4) 子の居所指定に関する親権者の関与離婚後に父母の双方を親権者と定め、父母の一方を監護者と定めた場合における子の居所の指定について、次のいずれかの考え方に基づく規律を設けるものとする。

解説

これは注意です。
「子どもの居所指定」だけが特別に取り出されています。ここまでの提案では、居所指定は監護権の範囲とされていたのですが、共同親権の対象にするという提案です。
子どもの居所=同居親の居所ですから、同居親の居住選択の自由も制約されてしまいます。「住まいの決定」が共同親権の範囲に入るかどうかを聞かれている部分です。 

【X案】上記(2)アの規律に従って、監護者が子の居所の指定又は変更に関する決定を単独で行うことができる。
【Y案】上記(2)アの規律にかかわらず、上記(2)イの【α案】、【β案】又は【γ案】のいずれかの規律により、親権者である父母双方が子の居所の指定又は変更に関する決定に関与する。

解説

X案は監護者が単独で行うという提案です。

Y案は、本当に注意が必要です。共同親権者二人が子どもの住むところの決定に関与する、とされています。「アの規律にかかわらず」というのは、現行民法821条の居所指定に関しては、監護者の決定事項とする、と提案したけれど、それは都合よく無視して置いておいて、「住むところについてだけは別居親とも協議する」という提案をします、ということです。論理的に矛盾していますね。

パブコメへの提案

第2 - 4 離婚後の父母の一方を親権者と定め、他方を監護者と定めた場合の規律

離婚後の父母の一方を親権者と定め、他方を監護者と定めたときの監護者の権利義務について、上記3(2)ア(及び同項目に付された上記注2)と同様の整理をする考え方について、そのような考え方を明確化するための規律を設けるかどうかも含め、引き続き検討するものとする

解説

ここはさほど心配がいらない部分のように読めます。

第2 - 5 認知の場合の規律

【甲案】
父が認知した場合の親権者について、現行民法第819条を見直し、父母双方を親権者と定めることができるような規律を設けるものとした上で、親権者の選択の要件や父母双方が親権を有する場合の親権の行使に関する規律について、上記2及び3と同様の規律を設けるものとすることについて、引き続き検討するものとする。
【乙案】
父が認知した場合の親権者についての現行民法第819条の規律を維持し、父母の協議(又は家庭裁判所の裁判)で父を親権者と定めたときに限り父が親権を行う(それ以外の場合は母が親権を行う)ものとする。

(注) 認知後に父母の一方を親権者と定め、他方を監護者と定めた場合における規律について、本文の上記4と同様の整理をする考え方がある。

解説

これは、びっくり仰天の提案です。
【甲案】は、父が認知した場合、その子どもに対して共同親権となるというものです。
【乙案】は、現行法どおりです。
父が認知した場合、協議又は審判で父を親権者と定めたときに限り父が親権を行い、それ以外の場合は母が親権を行うというものです。

現行法は、父と子どもの関係を立証しなくても認知できる制度であることをご存知ですか。
認知届は、父親または子どもの本籍地・住所地のいずれかの市区町村役場で届け出ることができます。
認知届、印鑑(認印可)、本人確認書類、父親の本籍地ならこれだけで届け出ることができ、女性側が拒否することはできません。
極端に言えば、「男性が任意に女性を選んで子どもの父親になることが」制度なのです。
現行は「認知」すると「扶養義務」が発生するだけですから、父親側が積極的に「認知する」ことはあまりなかったわけですが、「親権」を持つことができる=子どもを通して「住むところや財産や就職や進学や」いろいろなことをコントロールすることができる制度になるとしたら、犯罪的な行為に使われはしないでしょうか。
▼ストーキングに使われるイメージ▼
シングルマザーにストーキングしていた男性が、その女性の子どもの父親として届け出て共同親権者となる。子どもとの面会交流調停を申し出たり、間接交流で写真の要求などが出され、却下されるものの戸籍上の父として学校や医療機関では関与が求められたりするなど、日常的な恐怖と生活上の困難にさらされている。

パブコメへの提案

第3 - 1 離婚時の情報提供に関する規律

【甲案】
未成年の子の父母が協議上の離婚をするための要件を見直し、原則として、【父母の双方】【父母のうち親権者となる者及び監護者となる者】が法令で定められた父母の離婚後の子の養育に関する講座を受講したことを協議上の離婚の要件とする考え方について、引き続き検討するものとする(注)。
【乙案】
父母の離婚後の子の養育に関する講座の受講を協議上の離婚の要件とはせず、その受講を促進するための方策について別途検討するものとする。

(注) 裁判離婚をする場合において、例えば、家庭裁判所が離婚事件の当事者に離婚後養育講座を受講させるものとすべきであるとの考え方がある一方で、そのような離婚後養育講座の受講を義務付けることに消極的な考え方がある。

解説

協議離婚でも、公的な「講座」を受ける義務を作ろう、という提案です。

パブコメへの提案

第3 -2 父母の協議離婚の際の定め
(1)子の監護について必要な事項の定めの促進

【甲①案】
未成年の子の父母が協議上の離婚をするときは、父母が協議をすることができない事情がある旨を申述したなどの一定の例外的な事情がない限り、子の監護について必要な事項(子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担など)を定めなければならないものとした上で、これを協議上の離婚の要件とするものとする考え方について、引き続き検討するものとする(注1)。【甲②案】【甲①案】
の離婚の要件に加えて、子の監護について必要な事項の定めについては、原則として、弁護士等による確認を受けなければならないものとする考え方について、引き続き検討するものとする(注2)。
【乙案】子の監護について必要な事項の定めをすることを父母の協議上の離婚の要件としていない現行民法の規律を維持した上で、子の監護について必要な事項の定めがされることを促進するための方策について別途検討するものとする(注3)。

解説

協議離婚に際して様々な取り決めをする義務を課すという提案です。
【甲①案】
子の監護について必要な事項(監護者、面会交流、養育費など)を定めなければ協議離婚できないということ。定められないときは、「協議できない事情がある旨を申述(報告)」しなければなりません。ここで、「報告」を二人でしなければならないとなると、「話し合いの強要」になることが想定できて、「話し合いができない・話し合えないほど恐怖がある両親」の場合は無理ではないでしょうか。※報告先は書いていません

【甲②案】 
甲①案よりも更にハードルを上げて、子の監護について必要な事項の定めについては、原則として、弁護士等による確認を受けなければならないとされました。

【乙案】
現行法どおり。監護者や面会交流、養育費の定めは協議離婚の要件とはしません。

こんなに協議離婚の規制を厳しくしたら、「結婚」する人がさらに減りますね。また、弁護士等の確認というところの、等も気になります。DVや女性の権利に無自覚な業者が「女性に説教する場」になったりしないような仕組みが必須ではないでしょうか。
そもそも弁護士だって何を材料に確認したらいいのか何も決まっていません。

パブコメへの提案

第3 -2 父母の協議離婚の際の定め
(2) 養育費に関する定めの実効性向上

子の監護に要する費用の分担に関する父母間の定めの実効性を向上させる方向で、次の各方策について引き続き検討するものとする。ア 子の監護に要する費用の分担に関する債務名義を裁判手続によらずに容易に作成することができる新たな仕組みを設けるものとする。イ 子の監護に要する費用の分担に関する請求権を有する債権者が、債務者の総財産について一般先取特権を有するものとする。

解説

ア 債務名義を容易に作成することができる新たな仕組みを設ける
イ 一般先取特権(法律上自動的に担保が設定される)を有するものとする

いずれにせよ、自力で執行申立をしなければ養育費は手にできないということが書いてあります。
自己責任ということでしょうか。
また、養育費の義務者が怒鳴ったり怒ったり理不尽なことをも言い募るケースは少なくないので、執行申立を躊躇し、結局断念してしまう方も少なくないという結果が危惧されます。

パブコメへの提案

第3 -2 父母の協議離婚の際の定め
(3) 法定養育費制度の新設

父母が子の監護について必要な事項の協議をすることができない場合に対応する制度として、一定の要件の下で、離婚の時から一定の期間にわたり、法定された一定額の養育費支払請求権が発生する仕組みを新設するものとし、その具体的な要件や効果(上記(2)イの一般先取特権を含む。)について引き続き検討するものとする。

解説

養育費の協議ができない場合、一定額を法律で定めて、養育費支払請求権が発生する仕組みを新設しようという提案です。
議事録などを見ていると、委員の大半は、算定表で簡単に養育費の額が計算できると思っているように読めます。実際には収入額の把握すら困難な自営業者、学費や習事、「専業主婦と潜在的稼働能力」など実際に決めるのはものすごく大変だということが見逃されているように思います。
法定といいながら、具体的な額についても未定で、数万円程度(児童手当・児童扶養手当程度)、ないよりまし、という意見が出ているようです。最低10,000円という発言すら。
いや、それは違うでしょう、と言いたくなります。   

パブコメへの提案

第3 -3 離婚等以外の場面における監護者等の定め

次のような規律を設けるものとする(注)。
婚姻中の父母が別居し、その婚姻関係が破綻したことその他の事由により必要があると認められるときは、父母間の協議により、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会その他の交流その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定めることができる。この協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の申立てにより、当該事項を定めることができる。
(注) 別居や婚姻関係破綻の判断基準(例えば、別居期間の長さを基準とするなど)を明確化するものとする考え方がある。また、別居や婚姻関係破綻の場面においても、子の監護について必要な事項や婚姻費用の分担に関する定めが促進されるようにするための方策を講ずるものとする考え方がある。

解説

これも要注意の提案です。「離婚」ではなく「別居」の時にも「協議するという義務を課す」ということですから。「別居」を抑止する効力を持つでしょう。
勝手に別居させない、という強い意志を感じます。
「別居」のハードルを上げることが、誰の利益になるのでしょうか。
子どもを虐待から逃れさせる必要に迫られた時、「協議」ができるものでしょうか?
また、「別居」の概念規定も曖昧なままです。
里帰り出産、単身赴任、日本社会は欧米と異なり「夫婦」が離れて暮らす状態は少なくありません。
どこまでを「別居」とするかは検討されるべきでしょう。 

パブコメへの提案

第3 - 4 家庭裁判所が定める場合の考慮要素

(1) 監護者
家庭裁判所が子の監護をすべき者を定め又はその定めを変更するに当たっての考慮要素を明確化するとの考え方について、引き続き検討するものとする(注1)。
(2) 面会交流(親子交流)
家庭裁判所が父母と子との面会その他の交流に関する事項を定め又はその定めを変更するに当たっての考慮要素を明確化するとの考え方について、引き続き検討するものとする(注2、3)。
(注1)
子の監護をすべき者を定めるに当たっての考慮要素の例としては、①子の出生から現在までの生活及び監護の状況、②子の発達状況及び心情やその意思、③監護者となろうとする者の当該子の監護者としての適性、④監護者となろうとする者以外の親と子との関係などがあるとの考え方がある。このうち、①の子の生活及び監護の状況に関する要素については、父母の一方が他の一方に無断で子を連れて別居した場面においては、このような行為が「不当な連れ去り」であるとして、当該別居から現在までの状況を考慮すべきではないとする考え方がある一方で、そのような別居は「DVや虐待からの避難」であるとして、この別居期間の状況を考慮要素から除外すべきではないとの考え方もある。このほか、⑤他の親と子との交流が子の最善の利益となる場合において、監護者となろうとする者の当該交流に対する態度を考慮することについては、これを肯定する考え方と否定する考え方がある。
(注2)
父母と子との交流に関する事項を定めるに当たっての考慮要素の例としては、①子の生活状況、②子の発達状況及び心情やその意思、③交流の相手となる親と子との関係、④安全・安心な面会交流を実施することの可否(交流の相手となる親からの暴力の危険の有無などを含む。)などがあるとの考え方がある。このほか、交流の相手となる親と他方の親との関係を考慮することについては、これを肯定する考え方と否定する考え方がある。
(注3)
面会交流を実施する旨の定めをするかどうかの判断基準を明確化すべきであるとの考え方がある。

解説

ここに書いてあるのは、「考慮要素を明確化する」ということを提案するということです。

注1をよく読んでみてください。
子どもからみて、愛着関係のある親と一緒にいる状態は変わらないのですから、「不当な連れ去り」という考え方は認められません

次の注2も重要です。
この部分は、フレンドリーペアレントルール(※)と読む事もできます。
フレンドリーペアレントルールが導入されている諸外国では、例えば母親側がDVだと父親を敵視したり、告発したりすると、裁判所から悪い母親と見做され、親権を剥奪されてしまったという事案が多数あります。
その結果、DVとか虐待の主張でできなくなるという実態が沢山あります。
この部分の提案では、「連れ去り」と「フレンドリーペアレントルール」に着目したいと思います。 

※「フレンドリーペアレントルール」とは、他方の親との面会交流を友好的に認める親が監護者としてふさわしい、と判断する基準のこと。

パブコメへの提案

第4 親以外の第三者による子の監護及び交流に関する規律の新設
1 第三者による子の監護

(1) 親以外の第三者が、親権者(監護者の定めがある場合は監護者)との協議により、子の監護者となることができる旨の規律を設けるものとし、その要件等について引き続き検討するものとする(注1、2)。
(2) 上記(1)の協議が調わないときは家庭裁判所が子の監護をすべき者を定めるものとする考え方について、その申立権者や申立要件等を含め、引き続き検討するものとする。
(注1)
監護者となり得る第三者の範囲について、親族に限るとする考え方や、過去に子と同居したことがある者に限るとする考え方がある。
(注2)
親以外の第三者を子の監護者と定めるには、子の最善の利益のために必要があることなどの一定の要件を満たす必要があるとの考え方がある。

解説

技術的な部分なので、特段に意見提出はいらないように思います。

第4 - 2 親以外の第三者と子との面会交流

(1)親以外の第三者が、親権者(監護者の定めがある場合は監護者)との協議により、子との面会その他の交流をすることができる旨の規律を設けるものとし、その要件等について引き続き検討するものとする(注1、2)。
(2)上記(1)の協議が調わないときは家庭裁判所が第三者と子との面会その他の交流について定めるものとする考え方について、その申立権者や申立要件等を含め、引き続き検討するものとする。
(注1)子との交流の対象となる第三者の範囲について、親族に限るとする考え方や、過去に子と同居したことがある者に限るとする考え方がある。
(注2)親以外の第三者と子との交流についての定めをするには、子の最善の利益のために必要があることなどの一定の要件を満たす必要があるとの考え方がある。

解説

親以外の第三者として議論の中で想定されていたのは祖父や祖母です。
祖父母は子の養育に何も責任もっていません。
そのような祖父母に親とは別に権利を認めることはふさわしいのでしょうか。

パブコメへの提案

第5 子の監護に関する事項についての手続に関する規律の見直し
1 相手方の住所の調査に関する規律

子の監護に関する処分に係る家事事件手続において、家庭裁判所から調査の嘱託を受けた行政庁が、一定の要件の下で、当事者の住民票に記載されている住所を調査することを可能とする規律(注1、2)について、引き続き検討するものとする(注3)。
(注1)
調査方法としては、行政庁が、住民基本台帳ネットワークシステムを利用して調査するとの考え方がある。
(注2)
当事者は、家庭裁判所又は行政庁が把握した住所の記載された記録を閲覧することができないとの規律を設けるべきであるとの考え方がある。
(注3)
相手方の住民票に記載されている住所が判明したとしても、相手方が当該住所に現実に居住しているとは限らないために居住実態の現地調査が必要となる場合があり得るところであり、こういった現地調査に係る申立人の負担を軽減する観点から、例えば、公示送達の申立ての要件を緩和すべきであるとの考え方がある。他方で、公示送達の活用については相手方の手続保障の観点から慎重に検討すべきであるとの考え方もある。

解説

養育費や面会交流の調停を申し立てるときには相手方の住所を記載するルールになっています。相手方が住民票を移転している場合、一般の方が、住民票の移転先を追跡することは可能ですが、ちょっと手間がかかることは事実です。とくに相手方が住所を転々としている場合、戸籍と転々と転籍している場合かかる相手方の負担を軽減するために、裁判所がお手伝いしましょうという提案です。
しかし、
【立法事実がない】
離婚や別居から長期間(何十年と)経過しているわけでない家事事件調停の場合、相手方が転居や転籍を繰り返しているということはほとんどありません。遺産分割調停の場合には、是非こういう制度があるといいと思いますが今回の提案は対象外。相手方の住所を裁判所が調査に協力するというのであれば、一般民事の需要は多いはずです(特に貸金業者は大歓迎)。監護に関する家事事件では必要とする事実はなく、以下の弊害も考えると反対すべきです。

【なぜ「行政庁」?】
法務省の提案では、住基ネットで住所を取得するとしていますが、そうであれば、「行政庁」でなく「市町村」でたりるはずです。あえて「行政庁」とした意図があるのでしょうか。そもそも住民票を取得しても実際の住所とは異なることが多く、送達(交付)することができず、住民票上の住所では申立できないことが多いです。更なる調査(実際に住んでいる住所の調査)まで視野にいれての「行政庁」なのではないでしょうか。つまり、教育委員会(学籍簿で子の転校先を追跡)や年金事務所(勤務先を追跡)までも念頭においていると考えた方がいいでしょう。現行法ではできない転校先や勤務先情報の収集の調査を可能とする制度の提案と理解しています。加えて、この提案では「当事者に開示する」可能性を否定していないので、裁判所が行政庁を通じて得た情報を当事者に開示することも想定されます。

【支援措置は意味がなくなる】
支援措置は「行政庁」のごく一部の端末(戸籍を扱う係など)にしかかかっておらず、普段戸籍を扱わない部署では支援措置の有無がわからないまま、裁判所に回答することになり、結果として、支援措置がかかっている事案でも、被害者の住民票上の住所が当事者に開示されることになるのではないでしょうか。支援措置制度が被害者の保護を図ろうとした意味を大きく損なわせる制度の提案であり、被害者の保護をないがしろにするというほかありません。 

パブコメへの提案

第5 - 2 収入に関する情報の開示義務に関する規律

養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に関して、当事者の収入の把握を容易にするための規律について、次の考え方を含めて、引き続き検討するものとする。
(1) 実体法上の規律
父母は、離婚するとき(注1)に、他方に対して、自己の収入に関する情報を提供しなければならないものとする。
(2) 手続法上の規律
養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に関する家事審判・家事調停手続の当事者や、婚姻の取消し又は離婚の訴え(当事者の一方が子の監護に関する処分に係る附帯処分を申し立てている場合に限る。)の当事者は、家庭裁判所に対し、自己の収入に関する情報を開示しなければならないものとする(注2)。
(注1)
婚姻費用の分担に関し、離婚前であっても、一定の要件を満たした場合には開示義務を課すべきであるとの考え方がある。
(注2)
当事者が開示義務に違反した場合について、過料などの制裁を設けるべきであるとの考え方がある。

解説

実体法上の義務とすることは、心配です。
収入状況をお互いに開示することですから一見問題ないように見えます。しかし、家庭という密室、離婚とか別居間際の夫婦のなかで、「見せろ」「いやだ」という争いがあるなかで「法的義務」とすることは、かえって紛争の原因を招くのではないか、提出義務は調停や裁判になってからでいいのではないかという意見もあります。
一方で、パートナーが露骨に収入を隠している、同居中でも早い時期に開示させたいので「法的義務」にして欲しいという意見もあるかもしれません。
皆さんの経験に基づくご意見を寄せてください。 

パブコメへの提案

第5 - 3 (1) 面会交流に関する裁判手続の見直し

(1) 調停成立前や審判の前の段階の手続
面会交流等の子の監護に関する処分の審判事件又は調停事件において、調停成立前又は審判前の段階で別居親と子が面会交流をすることを可能とする仕組みについて、次の各考え方に沿った見直しをするかどうかを含めて、引き続き検討するものとする(注1)
面会交流に関する保全処分の要件(家事事件手続法第157条第1項等参照)のうち、急迫の危険を防止するための必要性の要件を緩和した上で、子の安全を害するおそれがないことや本案認容の蓋然性(本案審理の結果として面会交流の定めがされるであろうこと)が認められることなどの一定の要件が満たされる場合には、家庭裁判所が暫定的な面会交流の実施を決定することができるものとするとともに、家庭裁判所の判断により、第三者(弁護士等や面会交流支援機関等)の協力を得ることを、この暫定的な面会交流を実施するための条件とすることができるものとする考え方(注2、3)

解説

ここは重大な提案です。
面会交流を申し立てられた、その調停の結論が出る前に、「面会交流」をすることを裁判所が命令するとう制度にしますと提案されているのです。
「保全処分=仮処分」がされる事もあり、新しい手続きを決めて裁判所が命令する事もあると書いてあります。つまり、申し立てられたら最後「必ず面会交流させなければならない」という規律になります。
審議会でも大きな議論となったところで、もともとは、暫定的面会交流命令という全く新しい制度の提案でした。
保全処分との関係が不明という意見があり、保全処分の枠にとどめるが、要件(保全の必要性)をほぼなしとする提案になっています。
保全処分とは「早急に、財産の保存や、身上監護の手当がなければ、本人にとって取り返しのつかない損害が生じてしまうような状況」に対し裁判所から出すものです。その「取り返しがつかない」という要件を外して、子どもの身体が安全であることが確認できたら、面会交流命令を出すと「ア」で書かれています。 
そこまでして、面会交流をしなければならないのでしょうか?
実態として、養育費の支払いよりも重要でしょうか?

イ 家庭裁判所は、一定の要件が満たされる場合には、原則として、調停又は審判の申立てから一定の期間内に、1回又は複数回にわたって別居親と子の面会交流を実施する旨の決定をし、【必要に応じて】【原則として】、家庭裁判所調査官に当該面会交流の状況を観察させるものとする新たな手続(保全処分とは異なる手続)を創設するものとする考え方 

解説

イ は、さらに問題です。調停が申立され「一定の期間」が経過すれば、1回又は複数回面会せよ決定するという提案です。現在も「試行面会」という制度がありますが、調停合意や審判に向けて判断材料を集めるための手続で、必ず調査官が立ち会い、面会の様子が報告書という形で提供されます。当然、試行面会は双方の合意のもと行われます。今回の提案内容は命令ですし、調査官の立ち会いも期待できません(裁判所は消極的ときいています)。
アもそうですが、裁判所は命令だけだして、その後のことは関与しない、という制度です。一方で、調停や審判という手続はと同時並行することになるので、手続が重層的で混乱することは明らかです。 

13回部会の議事録では、法務省が「まず一度」「まず一回」ということばを繰り返しています。まず一度面会をするというスタンスです。けれども、早期の面会が子の利益になるというエビデンスはありません。早期に1回面会しなかったから、親子関係が疎外されたという調査などありません。親子関係がよくないのは、同居中の出来事に由来することの方が多いと考えるのが自然です。
なにより、この提案は家裁実務が面会交流原則実施論からニュートラルフラット(※)へと変遷していることに逆行するもので、原則実施論のもと起こった面会交流中に起こった殺人事件など悲惨な出来事に対する反省が全く見受けられず、無責任というほかないと考えています。

※ニュートラル・フラット:同居親及び別居親のいずれの側にも偏ることなく、先入観を持つことなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮する立場

パブコメへの提案

第5 - 3 (2) 成立した調停又は審判の実現に関する手続等

面会交流に関する調停や審判等の実効性を向上させる方策(執行手続に関する方策を含む。)について、引き続き検討するものとする。
(注1)
調停成立前や審判前の段階での面会交流の実施に関する規律については、本文のような新たな規律を設けるべきではないとの考え方や、家庭裁判所の判断に基づくのではなく当事者間の協議により別居親と子との面会交流を実現するための方策を別途検討すべきであるとの考え方もある。
(注2)
面会交流に関する保全処分の要件としての本案認容の蓋然性の有無を判断するに際して、子の最善の利益を考慮しなければならないとの考え方がある。また、面会交流に関する保全処分の判断をする手続(本文の(1)アの手続)においても、家庭裁判所が、父母双方の陳述を聴かなければならず、また、子の年齢及び発達の程度に応じてその意思を考慮しなければならないものとする考え方がある。本文の(1)イの手続についても、同様に、父母双方の陳述や子の意思の考慮が必要であるとの考え方がある。
(注3)
本文(1)アの考え方に加えて、調停又は審判前の保全処分として行われる暫定的な面会交流の履行の際にも、家庭裁判所が、家庭裁判所調査官に関与させることができるものとする考え方もある。

解説

面会交流をすべきという審判が出たら、実現させるにはどうすればいいか検討する方向を提案しているということです。

パブコメへの提案

第5 - 4 養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に係る金銭債権についての民事執行に係る規律

養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に係る金銭債権についての民事執行において、1回の申立てにより複数の執行手続を可能とすること(注1)を含め、債権者の手続負担を軽減する規律(注2)について、引き続き検討するものとする。
(注1)
1回の申立てにより、債務者の預貯金債権・給与債権等に関する情報取得手続、財産開示手続、判明した債務者の全ての財産に対する強制執行等を行うことができる新たな制度を設けるべきであるとの考え方がある。
(注2)
将来的に、預金保険機構を通じて、相続人等の利用者が、金融機関に対し、被相続人等の個人番号(マイナンバー)が付番された口座の存否を一括して照会し、把握することが可能となる仕組みが整備されることから、民事執行法における預貯金債権等に係る情報の取得手続においても、当該仕組みを利用するなどして、裁判所が複数の金融機関に対する債務者の預貯金債権に関する情報を、一括して探索することができる制度を設けるべきであるとの考え方などがある。

解説

この検討は歓迎ではないかと思われます。

第5 - 5 家庭裁判所の手続に関するその他の規律の見直し

(1) 子の監護に関する家事事件等において、濫用的な申立てを簡易に却下する仕組みについて、現行法の規律の見直しの要否も含め、引き続き検討するものとする。
(2) 子の監護に関する家事事件等において、父母の一方から他の一方や子への暴力が疑われる場合には、家庭裁判所が当該他の一方や子の安全を最優先に考慮する観点から適切な対応をするものとする仕組みについて、現行法の規律の見直しの要否も含め、引き続き検討するものとする。

解説

本提案において、前進させてほしい!と思える部分です!
リーガルハラスメントにあたるような申し立ての却下、暴力があると思われる場合の対応などを検討すると書かれています。

パブコメへの提案

第6 養子制度に関する規律の見直し

1 未成年者を養子とする普通養子縁組(以下「未成年養子縁組」という。)に関し、家庭裁判所の許可の要否に関する次の考え方について、引き続き検討するものとする(注2)。
【甲案】
家庭裁判所の許可を要する範囲につき、下記①から③までのいずれかの方向で、現行法の規律を改める。
① 配偶者の直系卑属を養子とする場合に限り、家庭裁判所の許可を要しないものとする。
② 自己の直系卑属を養子とする場合に限り、家庭裁判所の許可を要しないものとする。
③ 未成年者を養子とする場合、家庭裁判所の許可を得なければならないものとする。
【乙案】
現行民法第798条の規律を維持し、配偶者の直系卑属を養子とする場合や自己の直系卑属を養子とする場合に限り、家庭裁判所の許可を要しないものとする。

 2 (上記1のほか)未成年養子縁組の成立要件につき、父母の関与の在り方に関する規律も含めて、引き続き検討するものとする(注3)。 

3 未成年養子縁組後の親権者に関する規律につき、以下の方向で、引き続き検討するものとする(注4、5)。
① 同一人を養子とする養子縁組が複数回された場合には、養子に対する親権は、最後の縁組に係る養親が行う。
② 養親の配偶者が養子の実親である場合には、養子に対する親権は、養親及び当該配偶者が共同して行う。
③ 共同して親権を行う養親と実親が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方(注6)を親権者と定めなければならない。裁判上の離婚の場合には、裁判所は、養親及び実親の一方(注6)を親権者と定める。
4 未成年養子縁組後の実親及び養親の扶養義務に関する規律として、最後の縁組に係る養親が一次的な扶養義務を負い(当該養親が実親の一方と婚姻している場合には、その実親は当該養親とともに一次的な扶養義務を負う)、その他の親は、二次的な扶養義務を負うという規律を設けることにつき、引き続き検討するものとする。

解説

未成年者を養子縁組する時の規律に関してです。具体的な制度の提案に至っていませんが、共同親権者の同意がないと、再婚しても養子縁組できない、という点がポイントです。それは子の利益になるのでしょうか。

パブコメへの提案

第7 財産分与制度に関する規律の見直し

1 財産分与に関する規律の見直し
財産の分与について、当事者が、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求した場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその協力によって取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮し、分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めるものとする。この場合において、当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

解説

財産分与については、現行法では、①精算的財産分与と②扶養的財産分与があるとされていますが、ほとんど①です。②はほんのおまけに過ぎないというのが実態です。
しかし、それでは、夫婦のキャリアによっては不公平ではないか(補償的財産分与をもうけるべき)ということは平成8年の法制審議会から議論されていたことです。法務省は今回も補償的要素についてははっきり提案していません。今回こそ、真の意味で公平性が回復されるような制度設計が求められるところです。

2 財産分与の期間制限に関する規律の見直し
財産分与の期間制限に関する民法第768条第2項ただし書を見直し、【3年】【5年】を経過したときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができないものとするほかは、現行法のとおりとする。

3 財産に関する情報の開示義務に関する規律
財産分与に関して、当事者の財産の把握を容易にするための規律について、次の考え方を含めて、引き続き検討するものとする。
(1) 実体法上の規律夫婦は、財産分与に関する協議をする際に、他方に対して、自己の財産に関する情報を提供しなければならないものとする。
(2) 手続法上の規律財産分与に関する家事審判・家事調停手続の当事者や、婚姻の取消し又は離婚の訴え(当事者の一方が財産の分与に関する処分に係る附帯処分を申し立てている場合に限る。)の当事者は、家庭裁判所に対し、自己の財産に関する情報を開示しなければならないものとする(注)。
(注) 当事者が開示義務に違反した場合について、過料などの制裁を設けるべきであるとの考え方がある

解説

ここも収入に関する情報の開示義務(第5の2)と同様、実体法上の義務とすることは、対等な関係にない当事者にとって紛争の原因となるのではないかという意見があるところです。なお、ここで対象となる開示義務は、いわゆる共有財産だけではなく、へそくり財産!は勿論のこと、親からもらったものであっても、相続で得たものなども含めた全ての財産の開示義務だと考えてください。それらも全て開示せよという義務があるという意味です。 

パブコメへの提案

第8  その他所要の措置

第1から第7までの事項に関連する裁判手続、戸籍その他の事項について所要の措置を講ずるものとする(注1、2)。
(注1)
夫婦間の契約の取消権に関する民法第754条について、削除も含めて検討すべきであるとの考え方がある。
(注2)
第1から第7までの本文や注に提示された規律や考え方により現行法の規律を実質的に改正する場合には、その改正後の規律が改正前に一定に身分行為等をした者(例えば、改正前に離婚した者、子の監護について必要な事項の定めをした者、養子縁組をした者のほか、これらの事項についての裁判手続の申立てをした者など)にも適用されるかどうかが問題となり得るところであるが、各規律の実質的な内容を踏まえ、それぞれの場面ごとに、引き続き検討することとなる。

解説

実は、ここは大変重要なポイントが含まれています。
改正後の規律が改正前の身分行為に適用されるか(すでに離婚成立して単独親権になっている当事者も共同親権を求められるのか)と書かれています。
理論的には、子の利益のための制度変更だとするなら、改正前に離婚していても適用されるのが筋と言えます。そうすると、すでに離婚が成立し、親権の争いも終了している方にも、再度「共同親権とするかどうか」の審判をしなくてはならないかもしれないということです。大変大きな影響があります。

パブコメへの提案